屋根塗装には「縁切り」という工程や注意点、トラブルの原因などについてご紹介していきます。
コロニアルの屋根で「縁切り」は屋根の耐久性や雨漏りなど様々な事に影響してくる大事な工程ですので、屋根塗装をする前に「縁切り」について知っておく事はとても大事な事です。
一般の方には中々、馴染みのない単語ですが、縁切りを何のためにするのか?どのようにするのか?行われなかった時のリスクなど丁寧に書いていきたいと思います。
①屋根材の隙間が雨水の排水の要です。
その他にもリスクはあります。コロニアルを例で例えます。コロニアルは基本釘で止まっているのですが、内部に雨水が侵入すると、水は釘など少し凹んだ部分に集まる習性があるためこの釘に水が集中し徐々に腐り雨漏りをしたり、下地のコンパネを傷めてしまう事があります。
我々がお客様のお家の屋根調査の際に、時々あるのですが、屋根に登ると屋根がフワフワとしている時があります。これは、屋根の下地の木部が腐っている証拠でもあります。
そこまで傷んでいるとほとんどの場合その下の断熱材までが雨漏りでボロボロになっています。
そのために屋根塗装をする際に、「縁切り」という工程をしなければなりません。
しかし、塗装のプロでも「縁切りしろよ」と親方から言われ、その親方は元請けから言われたからしているだけで、どこを塗料でふさいでしまうといけないのか?
屋根はどこから雨水が侵入して、どこから排水される。だからここに「縁切り」をしておかなくてはいけない。
②「縁切り」のタイミング
③「縁切り」に便利な「タスペーサー」
縁切りの工程では、カッターナイフや皮スキという道具で、隙間を一つ一つ隙間を作って作業していきます。そのため屋根の大きさにもよりますが、2人で丸一日かけたりしながら縁切りをしていきます。
そのように非常に手間暇がかかるうえに、仕上げた塗装面を切るわけですから、汚い靴で上る事もできませんし、汚くなくても、仕上がりの屋根に登って歩いていると傷をつけてしまいます。
その難点を解消したのが、「タスペーサー」という縁切り材です。
◆タスペーサーで縁切りをする際は、縁切りをするタイミングが少し違ってきます。
タスペーサーで縁切りをする際は、高圧洗浄で屋根を綺麗にして、下塗りを下地作りのために必要な回数を入れてから完全に乾燥させ、タスペーサーを入れて、中塗り→上塗りと工程を進めてまいります。
この様に、タスペーサーを使うと仕上がった屋根にのぼる必要もなく縁切りが出来ますので、タスペーサーが使える
屋根は全てこの縁切り材料を使って縁切りをすることをおすすめいたします。
◆タスペーサーが使用できない屋根材もあります。
コロニアルなどでよくあるのですが、経年劣化で屋根材の隙間が4~5mm以上開いているとタスペーサーを入れても
抜け落ちてくるので、入れる事はできません。そもそもそこまで隙間が空いている屋根というのは、屋根材自体が寿命を迎えている可能性が高いので、塗装ではなく、カバー工法などをおすすめしています。
④「縁切り」をしていないための様々なトラブル
冒頭でも申しておりますが、縁切りというのは屋根材の一枚一枚の重なりから正しく雨水を排水するための大事な工程になります。
このことを理解したうえで、以下の画像を見てみてください。
写真では、雨漏りがするからといって知識のない業者が「縁切り」をせずに全ての隙間を塗料でゴテゴテに埋めた上でコーキングを色々な個所にしてある毛細管現象丸わかりの画像です。写真の屋根材を剥がした下の屋根材から上に水が上っているのが毛細管現象です。
この業者さんは
「雨水が侵入しないようにとあらゆる隙間を塗料とコーキングで埋めた」
のだと思うのですが、現実的にすべてを埋めるのは大変な事ですし、少しでも埋まっていない個所があればそこから雨水は侵入し続け、その雨水は排水されるところがなく、雨水は溜まる一方です。
そして全て埋められたとしても、冬場の結露などが雨漏りの原因になります。ですので、写真のような施工の仕方は本当に良くないですし、トラブルの元です。
この様に屋根に水がたまった状態が続くと色々なトラブルが発生します。
1.通気性が失われる
縁切りをしない事で先ほど申しましたように、雨水が溜まりっぱなしになると同時に結露からも雨漏りを起こします。そして木材自体も湿気が溜まったことが原因で腐ったりと、腐食が加速していきます。
せっかく綺麗にしようと考えて始めた屋根塗装が結果的に屋根を腐食させたり、雨漏りを引き起こす原因になっては、何のための屋根塗装か意味が分からなくなります。縁切りというのは屋根塗装をする上で非常に大事な工程になるという事をしっかりと覚えておく必要があるのではないかと思います。
2.屋根の下地のコンパネなどを傷めてしまう。
これも先ほど少し書いた内容ですが、正しく「縁切り」をしないと雨水が溜まり、その水が屋根材を止めてある釘に集中して釘が腐っていきます。
そしてその腐った釘がやせ細り、下地のコンパネなどを腐らせてしまう原因となります。そのような屋根に登ると表現が難しいのですが、屋根の上を歩いているとフワフワ感があります。その場合は、コンパネなどの更に下の断熱材まで傷んでしまっている可能性が非常に高いため、屋根塗装はあまりおすすめしません。
なぜなら、下地が腐っているから表面の屋根材を塗装した所で根本的な解決にはなっていないからです。
その場合は屋根の葺き替えという工事になってしまいます。
3.屋根材も傷んでいきます。
屋根材というのは、紫外線のあたる表面などはコーティングしてあったり、塗装してあったりと何かしらの保護はしてあるのですが、裏面は剥き出しの場合が多いです。そして、雨水がその裏面にたまると、勿論、屋根材自体も傷んでしまい、屋根材の寿命を加速させる結果となってしまいます。
⑤タスペーサー縁切り費用
今は、セイム社のタスペーサーで縁切りする事がほとんどですので、タスペーサーでの費用感を書いていきたいと思います。
あくまで当社での費用感となりますが、㎡でなく分かりやすくお家の坪数で見てみると35坪ほどの2Fの屋根で1000個ほど使用し、2万~4万円程度になります。
先ほど「縁切り」には手作業での縁切りとタスペーサーを使い縁切りをする方法があると申しましたが、「材料を使わないカッターとかで縁切りしたほうがやすくなるんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。
実際は縁切りにかかる労働人数と屋根が傷つくリスクなどを踏まえると、タスペーサーの方が、費用も少し安くなり、リスクもありませんので、総合的に判断するとタスペーサーの方が断然にお得になると言えます。
◆なぜ、縁切りは手抜きをされやすいのか?
まずは、業者さんが縁切りの大事さをキチンと認識していない事が大半の原因だと思います。
以下が原因の流れです。
元請けは「なんか必要だと聞くから入れよう」と下請けに「縁切りしてね」と伝える ↓ 下請の親方は「元請けから言われたから縁切りしろよ」と職人に伝える ↓ 職人は親方から言われたから意味は分からないけど、とりあえず入れる。 材料が少し足りなければ「まぁ目立たないしいいか」と妥協するorそもそも面倒だからいれない |
大体がこの流れだと思います。この様に誰一人として雨水の排水経路の大事さ、後々のトラブルについて理解していないので悪気なく、縁切りしない事が原因です。
⑥縁切りの必要な屋根、必要ない屋根
屋根の種類は多岐にわたります。
和風「和瓦」
砂、モルタルを材料とした「セメント瓦」
板状の「コロニアル」カラーベスト
板金で形成された「板金屋根」
などなど言い出せばキリがないほどあり、上の屋根の中にもまた多くの種類が存在します。
「板金屋根」でも「瓦棒」「折版屋根」などです。
上記でも、縁切りが必要な代表的な屋根は「コロニアル」カラーベストです。
必要のない屋根は和瓦やセメント瓦、板金屋根も必要ありません。板金屋根の中でも折版と呼ばれる屋根にはボルトの所にボルトキャップが必要だったりします。
※中でもクボタのアーバニーというオシャレなスレート屋根は注意が必要です。スレート屋根の中でも雨が内部に溜まりやすい屋根で、上手く縁切りしないと、縁切り材「タスペーサー」を無理に入れようとすると割れたり、状況を悪化させる場合がございます。
ご自宅の屋根の種類を調べて、塗装をする際に縁切りがいるのか?いらないのか?を信頼できる業者がいなければ、事前に調べておく事も大事かもしれません。
◆塗り替えが不要な屋根材
無機質素材の日本瓦は、そもそも、必要であれば塗装できますが、基本は塗装そのものを必要としない屋根材です。
そのため、縁切りという作業だけでなく、塗り替えリフォーム自体も基本は不要と考えて頂いて大丈夫です。ただし、セメントを混ぜて成型した「セメント瓦」タイプの瓦は塗装が必要ですので、屋根瓦が使われた家であればすべて縁切りが不要というわけではありませんのでご注意ください。
⑦まとめ
「縁切り」は、屋根塗装をする際に、とても大事な工程になります。お客様自身も「縁切り」は必要だと認識していても「なぜ必要なのか?」「しないとどうなるのか?」まで知っておくといいかも知れません。屋根塗装は信頼できる業者に任せるようにしましょう。また何か気になる事や、分からない事あればいつでもご連絡してください。ありがとうございました。